認知症とは
認知症とは
認知症とは、「記憶障害のほかに、失語、失行、失認、実行機能の障害が1つ以上加わり、その結果、社会生活あるいは職業上に明らかに支障をきたし、かつての能力レべルの明らかな低下が見られる状態」と定義されています。
認知症の症状の種類
症状の種類には、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など4つが挙げられます。
アルツハイマー型
認知症
|
脳血管性
認知症
|
レビー小体型
認知症
|
前頭側頭型
認知症
|
|
脳の変化 | 脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なタンパク質が溜まり、脳の神経細胞が変性・死滅して脳が委縮する | 脳血管障害(脳梗塞・ 脳出血・脳卒中)に よって脳の一部が壊死 する | レビー小体という特殊なタンパク質が脳の神経細胞に溜まる。 | 神経細胞内にピック球(タンパク質が変性した塊)の蓄積などが起こり、前頭葉と側頭葉が委縮する |
初期症状 |
物忘れ |
物忘れ | 幻視 妄想 認知機能の変動 パーキンソン症状 |
言葉がわからない 甘いものが過剰に好きになる 人物がわからない 同じ言葉や動作を繰り返す |
主な脳の 障害部位 |
頭頂葉 |
様々な部位 | 後頭葉 | 前頭葉 側頭葉 |
患者数 | 最も多い | アルツハイマー型 認知症の次に多い | 脳血管性認知症の次に多い | 少ない |
特徴的な 症状 |
記憶障害 物取られ妄想 言語障害 見当識障害 (自分が今いる場所がわからない等)など |
認知機能がまだらに低下 手足のしびれ 感情のコントロールがうまくいかない など |
認知機能の変動 幻想・妄想 パーキンソン症状 抑うつ症状 睡眠時の異常言動など |
無関心・自発性の低下 感情鈍麻 人格変化 物を盗む 同じ場所を周遊する など |
経過 | 記憶障害から始まり、広範な障害へ徐々に広がる | 脳卒中などの発作や、梗塞が起きるたびに認知機能が段階的に悪化する | 調子がよい時と悪い時を繰り返しながら進行する時に急速に進行することもある | 進行はゆっくりで、年単位で進行する |
アルツハイマー型認知症
脳の変化
脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なタンパク質が溜まり、脳の神経細胞が変性・死滅して脳が委縮する
初期症状
- 物忘れ
- 嗅覚障害
- 睡眠障害
- 原因不明の急激な体重減少
主な脳の障害部位
- 頭頂葉
- 側頭葉
患者数
最も多い
特徴的な症状
- 記憶障害
- 物取られ妄想
- 言語障害
- 見当識障害(自分が今いる場所がわからない等)など
経過
記憶障害から始まり、広範な障害へ徐々に広がる
脳血管性認知症
脳の変化
脳血管障害(脳梗塞・脳出血・脳卒中)によって脳の一部が壊死する
初期症状
物忘れ
主な脳の障害部位
様々な部位
患者数
アルツハイマー型認知症の次に多い
特徴的な症状
- 認知機能がまだらに低下
- 手足のしびれ
- 感情のコントロールがうまくいかないなど
経過
脳卒中などの発作や、梗塞が起きるたびに認知機能が段階的に悪化する
レビー小体型認知症
脳の変化
レビー小体という特殊なタンパク質が脳の神経細胞に溜まる。
初期症状
- 幻視
- 妄想
- 認知機能の変動
- パーキンソン症状
主な脳の障害部位
後頭葉
患者数
脳血管性認知症の次に多い
特徴的な症状
- 認知機能の変動
- 幻想・妄想
- パーキンソン症状
- 抑うつ症状
- 睡眠時の異常言動など
経過
調子がよい時と悪い時を繰り返しながら進行する時に急速に進行することもある
前頭側頭型認知症
脳の変化
神経細胞内にピック球(タンパク質が変性した塊)の蓄積などが起こり、前頭葉と側頭葉が委縮する
初期症状
- 言葉がわからない
- 甘いものが過剰に好きになる
- 人物がわからない
- 同じ言葉や動作を繰り返す
主な脳の障害部位
- 前頭葉
- 側頭葉
患者数
少ない
特徴的な症状
- 無関心・自発性の低下
- 感情鈍麻
- 人格変化
- 物を盗む
- 同じ場所を周遊するなど
経過
進行はゆっくりで、年単位で進行する
「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い(一例)
加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
体験したこと | 一部を忘れる (例:朝ごはんのメニュー) |
すべてを忘れている (例:朝ごはんを食べたこと自体) |
学習能力 | 維持されている | 新しいことを覚えられない |
もの忘れの自覚 | ある | なくなる |
探し物に対して | (自分で)努力して見つけられる | いつも探し物をしている 誰かが盗ったなどと、他人のせいにすることがある |
日常生活への支障 | ない | ある |
症状の進行 | 極めて徐々にしか進行しない | 進行する |
加齢によるもの忘れ
体験したこと
一部を忘れる(例:朝ごはんのメニュー)
学習能力
維持されている
もの忘れの自覚
ある
探し物に対して
(自分で)努力して見つけられる
日常生活への支障
ない
症状の進行
極めて徐々にしか進行しない
認知症によるもの忘れ
体験したこと
すべてを忘れている(例:朝ごはんを食べたこと自体)
学習能力
新しいことを覚えられない
もの忘れの自覚
なくなる
探し物に対して
- いつも探し物をしている
- 誰かが盗ったなどと、他人の せいにすることがある
日常生活への支障
ある
症状の進行
進行する
世界規模では毎年1,000万人近く、3秒に1人が新たに認知症になる
WHO(世界保健機関)によると2015年、認知症有病者数は5,000万人、そして毎年1,000万人近くが新たに認知症になるとの報告もあります。
これを365日、1日、1時間、と細かく割っていくと、約3秒に1人が世界のどこかで新たに認知症になっている計算です。
65歳以上は5人に1人が認知症に
日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年現在)と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されており、高齢社会の日本では認知症に向けた取組が今後ますます重要になります。
また、認知症は誰でもなりうることから、認知症への理解を深め、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる「共生」(認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また認知症があってもなくても同じ社会でともに生きるという意味)の社会を創っていくことが重要となります。
若年性認知症もある
若くても、脳血管障害やアルツハイマー型認知症のために認知症を発症することがあります。65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。若年性認知症者数は、3.57万人と推計されています。