介護保険認定調査ガイド

介護保険認定調査ガイド

介護保険認定調査について、現役の認定調査員にインタビューさせていただきました。

介護保険の要介護度とは

みなさん介護保険と言われても、介護の業界で働いていないとピンとくる人は少ないと思います。
まず要介護度というのは聞いたことありますか?

介護度が高い ↑
要介護5
要介護4
要介護3
要介護2
要介護1
要支援2
要支援1
介護度が低い ↓

ごく簡単に言うと、この介護度が高いほど介護サービスをたくさん使うことができますが、サービスを利用するほどかかる料金は高くなります。
この介護度を判定するために必要となるのが認定調査です。

認定調査とは

要介護・要支援認定の申請書が提出されると、要介護認定の申請をうけた市町村が、認定調査員を派遣し、ご本人やご家族に聞き取り調査を行うことです。

簡単に言うと、「〇〇の理由で介護が必要なんです!」ということを国に知らせるために、ご本人もしくはご家族などが市区町村に申請書を提出します。
すると、市町村が「それでは状況を確認するために、まずはどの程度大変なのか、話を聞く人を派遣します」という訳で、認定調査員が派遣されます。
派遣された認定調査員が、申請者(ご本人)・ご家族様などから話を聞き、その人がどういうことができないのか、どういう大変さがあるのかを調べるのが認定調査です。

認定調査の目的は何ですか?

実際に認定調査員という人の目で見て、申請者の心身状態・家族状況・住宅環境などを確認することが目的です。

認定調査員ってどんな人

公務員だと思っている方も多いですが、市区町村に委託された法人に所属するケアマネジャー資格を持つ人が担っている場合が多いです(新規申請・区分変更申請の場合は市区町村の職員が行く場合もあるようですが)。
認定調査員研修という研修を修了していることも条件の一つです。

すごく簡単にいうと、介護の知識を持った普通の会社員ですね。特に更新申請の場合はほとんどこの人たちが自宅に伺います。
なので緊張する必要はまったくありません。「意図的に介護度を下げてやろう」などと考えている調査員は皆無ですし、中立の立場で話を聞きますので、警戒する必要もまったくありません。

介護度はどのように決定されるのでしょうか?

認定調査に関わる人々には認定調査員、主治医、介護認定審査会委員、介護認定審査会事務局があります。
このうち認定調査員と主治医は、実際に申請者当人を知る「情報提供者」となります。
介護判定に必要な情報が記載された書類である、認定調査票と主治医意見書を作成し提出することにより、介護度の判定が行われます。

2つの書類が提出されると、介護認定審査会事務局がその2つの書類に間違いがないかなどを確認します。
まずはコンピューターで1次判定がおこなわれます。
この時点でどのぐらいの介護の手間があるか、おおよその数値が出ます。

ここからその結果では反映されない、2つの書類に記載された「介護の手間」の部分が、より専門性の高い有識者である、介護認定審査委員が集まり会議が開かれ、一時判定の修正・確定・変更が行われます。

このように認定調査員は重要な役割を占めてはいますが、決して1人で介護度を決定しているのではありません。
認定調査員は申請者(ご本人)・ご家族と直接お会いするため、「あの人に介護度を下げられた!」と思われることが多いのは、非常につらいです。

認定調査の流れを教えていただけますか?

まず認定調査員から、訪問する日程を相談する電話がかかってきます。
お住いの市区町村から認定調査のお知らせが送付されると思います。その前後で認定調査員から日程調整の連絡を行います。
電話がつながらない場合には順次、スケジュールが埋まっていく場合がありますのでスムーズに連絡が行えると非常にありがたいです。

できる限り日程は調査員の都合に合わせてもらいたい所ですが、もちろん無理な場合も多いと思うので相談して決めましょう。
申請30日以内に調査をおこなうのが基本なので、「忙しいから1ヵ月先で」など言われてしまうと困ります。

訪問する時間ですが、基本的には平日の9:00~17:00の間でお願いしています。あくまで私の場合ですが、祝祭日はOKです。
土・日は基本的に対応していませんが、家族が遠方に住んでいてその日しか無理だという場合には対応する場合があります。
土・日も対応してくれる調査員もいると思うので、連絡がきた際に聞いてみてください。

訪問をお約束した日時に認定調査員がご本人の住んでいる自宅にお伺いします。
ご本人に会い、日頃の生活状況を確認する必要があるため、基本的に自宅(日頃の状況を確認できる場所)で調査を行います。(ただし病院に長期入院中の場合などは、病院でも調査が可能です)。
認定調査では、お身体の動きを確認や、ご本人・ご家族から生活状況について聞き取りをします。

これもあれも伝えないと!とお思いになるのは分かるのですが、思うがままに話をすると認定調査員も???状態になります。認定調査員が順番に質問していくのでその項目に沿った回答をしてもらえると、結果的に調査時間も短縮できます。

認定調査にはどれくらいの時間がかかりますか?

大体1時間ぐらいです。私の場合は40~50分ぐらいが多いですが、会話が脱線し必要な情報がなかなか聞き取れない時は、それ以上の時間がかかる場合もあります。

どのようなときに認定調査がおこなわれますか?

  1. 新規で申請を行った時(新規申請、基本的に有効期間は6ヶ月)
  2. 有効期間が終了する時(更新申請、おおむね2~4年ごと)
  3. 本人の状態が、何らかの原因で大きな変化がみられた時(区分変更申請、3ヶ月~12ヶ月)

などです。

認定調査を行う際のポイントを教えてください

緊張しない

必要以上に緊張することはありません。普段通りにして、できること・できないことを正確に伝えるようにしましょう。

マシンガントークをしない

日常生活やお身体の状態について大変だと思うことを一方的にお話される場合、それを聞き取り、記載しまとめるのは非常に難しく、調査員が聞き漏らしてしまう可能性も高くなります。
一方的にしゃべり続けるのではなく、調査員に質問されたことについて、順に答えていくほうがスムーズで、結果的に短時間で調査が行うことができます。

介護していることは細かく伝える

「こんなこと言う必要もないかな?」と思うことでも、判定結果に大きな影響を与える場合があります。
例えば、「トイレは自分でできるけど、尿をトイレの床に飛び散らせてしまうので、毎回掃除してるんです」などの内容も、評価が変化するので調査員にしっかり伝えましょう。

認定調査の項目は

全部で74項目あります。下記に記載しているのは一部です。

体の動き

歩く・寝返り・ゆっくりと足踏みなど、可能な部分は実際にやってもらいます。

認知機能

自分の名前・生年月日、今の季節が理解できているかなどを聞きます。

詳細に聞く部分としては、

食事

自分で食べれているのか、誰かが口まで運んでいるのか。

移動

歩けているのか、歩くのにご家族の介助が必要なのか。

排泄

トイレは自分で行けているのか、ご家族が何か介助しているのか。

着替え

ご家族が介助しているのか、着替える順序など理解できているのか。

外出

1人で外出できるのか、ご家族が付き添っているのかどうか。

薬の内服

自分で管理できているのか、飲み忘れはないのか。

金銭の管理

お金の管理ができているのか、お金の流れが理解できているのかどうか。

過去14日間にうけた特別な医療について…点滴・透析・経管栄養などが実施されているかの項目です。

精神・行動障害

いわゆる「こんな行動で困ってるんです!」とご家族が思っている内容が該当することが多いです。
例えば同じ話をしつこく繰り返す、突然怒り出す、食べたのに忘れて食べてないと言う、夜中に外に出ようとするなど内容は多岐に渡ります。
基本的には、最近1ヵ月以内に起こった出来事を話しましょう。
1ヵ月以上前にあった行動で、現在はみられていない行動は評価対象には入りませんが、「ここ1ヵ月以内ではないですが…」という感じで調査員に話しておくのは有効だと思います。

認定調査の注意点を教えてください

訪問時、認定調査員にお茶などは出さなくても大丈夫です。
ご病気については、主治医意見書のほうで詳細な記載がされるので、調査員にはさらっと話すぐらいで大丈夫ですね。

認定調査を受ける際の事前準備は必要ですか?

事前準備としては、最近1ヵ月以内で、調査を受けるご本人(主にお父様・お母様・旦那様・奥様だと思います)の行動によって、ご家族が手間になった出来事を思い出してメモしておくと良いでしょう。
例えば自宅から出ていき、戻れなくなって探し回ったことがあったなどです。
この行動のあった回数(月1回など)、どのぐらい探し回ったか(2時間など)を記録しておき、当日認定調査員にお伝え下さい。

当日はご本人とご家族が、その場にいてくれれば何も問題はありません。
金銭管理について質問しますが、キャッシュカード・通帳など見せる必要はないです。印鑑もいりません。提出をするように言われたら、詐欺を疑いましょう。

認定調査を正確に判定してもらうポイントを教えてください

認知症の方の場合、ご家族が大変なのは非常によく分かります。でもその大変さを、介護度を判定する方に正確に伝えるためにはどうすればいいでしょうか?

そうです。具体的な頻度・かかる時間(介護の手間)です。
ご本人の行動によって、ご家族が手間となっていることがあれば(ご本人が同じ話をくり返しており、ご家族が話を聞いているなど)、頻度(月1回なのか週1回なのか)、ご家族が対応にとられた時間(1日のうちでとられる時間。30分なのか1時間なのか)を伝えましょう。

またご家族が何かしらの介助をしている場合は、細かいかなと思っても調査員に伝えておくと結果に反映され、正確に判定される可能性が高くなります。

例えば、ご家族が
(食事)食べている際、器を食べやすいように動かしている。
(洗顔)顔を洗ったあとタオルを手渡している。
(薬の内服)薬をケースに分けている。

などなど、例を挙げればきりがないですが、些細な介助でも選択が変わる項目が多いので、できるだけ詳細に伝えるようにしましょう。

ご家族が立ち会う際の注意点は

調査員がご本人に名前・生年月日・季節など質問している際は、答えないようにしてください。ご本人の認知機能を確認するための質問です。
ご本人の前では質問しにくい内容があるため、ご本人のいない場でご家族から話を聞ける状況を作ってもらえると非常に助かります。

普段の状況を正しく伝えるコツを教えてください

身体の動きなどは調査当日に確認させてもらいますが、普段より頑張って動いてしまう人も多いです。普段なら出来ていない動作があれば、後ほど調査員に伝えると良いでしょう。
日によっては歩けないことがあるなど、変化する場合も伝えておく必要がありますね。
また、いつもは季節も分かってなくて、5分前のことも覚えていないのに、調査当日だけ答えることができたという場合も、「いつもはこうなんです!」と後ほど普段の状況を伝えておきましょう。

認定調査の際、このような質問にはお答えできません

「介護度が下がらないようにしてください。」

調査員が介護度を決定することはありません。

「どのサービスを利用すればいいと思いますか?」

お答えすることはありません。「担当のケアマネジャーさんとご相談してみてください」とお答えします。

「施設に入所したいので、介護度を上げてください」

意図的に介護度を上げることはできません。調査員は聞き取った情報を、的確に状況が伝わるように書類にまとめて、提出することしかできません。
事実以外のことを記載することはできません。正確な情報を記載することに努めています。

「調査にきてるのに、なぜ持病とか身体の状態を知らないの?」

調査員に伝えられる事前情報は、申請の際に提出される「認定調査連絡票」に記載された情報のみです。ご担当のケアマネジャーが記入することが多い書類ですが、例えば認知症の疾患をお持ちの方の場合、認知症状について詳細に記載されている場合もあれば、「認知症有」としか記載されていないケースもあります。

個人情報保護の観点もあり、以前の調査票を認定調査員が見ることはありません。
ですので、更新の際も、毎回はじめからの聞き取りになるのです。

「見たらわかるでしょ。なんでそんなことを聞くの?」

調査員としてもご本人様の様子から着替えが困難であったり、トイレでズボンの上げ下げが難しいことが想像できる場合もあります。
しかし、その大変さを文章にして伝えるのが、調査員の仕事なのです。想像で書くわけにはいかないので、一つ一つ確認させていただくのです。

認定調査で困ったことTOP3

第3位 ご本人とご家族が喧嘩をはじめる

これは困ります。ご家族がご本人の前で「そんなの普段出来ていないでしょ!」と言ってしまい、言い合いがはじまることが多いです。
ご本人が怒るかな?と思う内容は、ご本人のいない場でこっそり伝えてもらえると助かります。

第2位 同席者がいない

家族や関係者の方が同席してください。
ご本人の実情を正確に把握するためにも、家族からのお話は貴重な情報です。
また、調査終了後、関係している事業所の人などに電話で確認しますが、サービスを利用していない方の場合はどうしようかと思います。

第1位 一方的にしゃべり続ける

一番多くて、一番大変です。こちらの質問への回答はそこそこに、どんどんしゃべり続けます(笑)
病気の話なんかは20年ぐらい前から、詳細に説明してくれます。こちらの話は聞いてもらえません(笑)

番外編として、電話のまったく繋がらない人は困ります。
〇曜日の10時から10時20分までしか電話をとりません。という記載が連絡票に記載してあり、1週間の内に電話できるチャンスが20分しかない人もいました。

インタビューまとめ

介護保険の認定調査では、申請者が平等かつ公平に調査を受ける権利があります。適正な評価を受けるために調査員からの質問には、正直に答えるようにしましょう。
認定調査の結果によってはご本人の人生が大きく変わります。正しい介護認定を受けるためにも、質問に対して控えめに答えたり、介護度が高くなるように話を膨らませて答えたりしてはいけません。
ご本人の普段の状況を正確に伝えるためにも家族や関係者の同席が必要なことや、事実や困っていることをありのまま伝えることが大切です。
普段の生活の中で、気づいたことなどはその都度細かくメモをしておくことも大事なポイントですね。

この情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。